少し前のお話になりますが、先月2月11日、倶知安町からの依頼を受けて、小学5年生を対象に模擬裁判を行いました。
町からは、「体験型の学習を」とのリクエストがあったので、生徒さんたちには、裁判官、検察官、弁護人、被告人、証人を演じてもらうことで、法律に携わる仕事を身近に感じてもらおうと考えました。
私自身、このようなリクエストを受けることは初めてだったので、試行錯誤でした。
模擬裁判のシナリオは、「3匹の子豚」を題材に、オリジナルで作りました。
「3匹の子豚」とは、ご存知のとおり、わらと木で家を作った1番目と2番めの子ぶたは、オオカミに家を吹き飛ばされてしまいますが、3番目の子ぶたはレンガで家を作ったので吹き飛ばされずにすみます。
オオカミは、3番目の子ぶたを食べてやろうと、子ぶたの家の煙突から中に入りますが、3番目の子ぶたが暖炉にお湯を沸かしていたため、そこに落ちたオオカミが大やけどをしてしまうというお話です。
模擬裁判のシナリオでは、このお話に少し工夫を凝らしました。
検察官のストーリーでは、子ぶたは、最初からオオカミに大やけどを負わせてやろうと考え、オオカミを挑発し、煙突から家の中に入らせ、オオカミにケガを負わせたというもので、傷害罪が成立するというものです。
他方、弁護側のストーリーは、オオカミが、突然、煙突から家の中に入り3番目の子豚を食べようとしたため、子ぶたはやむを得ず、たまたま夕食の準備のためにお湯を沸かしていた鍋の蓋を取り、オオカミにケガを負わせたというもので、正当防衛が成立し、無罪というものです。
生徒さんたちには、裁判官、検察官、弁護人等の役割を演じてもらい、模擬裁判後は、全員が裁判官になったつもりで、証言等の証拠から、結論を考えてもらいました。
これは、何か正解があるというものではありません。
生徒さんたちに議論してもらったところ、有罪・無罪の双方の意見がでましたが、いずれも理由付けがしっかりしたものでした。
私がこの模擬裁判を通じて伝えたかったことは、「物事には幾つもの考え方がある」ということです。
刑事事件で言えば、犯人が逮捕されて終わりではないこと。
犯人とされている人にも言い分があり、それをきちんと聞かなければなりません。
もしかしたら犯人ではないかもしれないのですから、逮捕=犯人と決めつけてはいけません。
これは日常生活でも同じです。
人との間で争い事になったとき、自分の考えだけで決め付けて行動していたのでは、何事も解決には向かいません。
自分の考えを持ちながらも、相手の言い分もきちんと聞く。そして、議論をしながら考えを深め、結論を導いて行く。
この模擬裁判を通じて、この考え方が少しでも伝われば、大変嬉しく思います。
模擬裁判では法律用語も使ったため難しいかなとも思いましたが、あとで感想を聞くと「分かりやすかった。」と言ってもらえたのでひとまず一安心。
同じようなオーダーが来たときに備え、シナリオをより良いものにしたいと考えています。